監修者 : JATI-ATI認定トレーナー 首藤陸
どこのジムでもヒップスラストを頑張る姿はフリーウエイトゾーンで目にする機会があるでしょう。お家トレーニングでも自重トレーニングの中で紹介する媒体が多いです。
ヒップスラストを行うと大臀筋を主に使うことで美尻効果が期待でき、下半身でも背面側を重点的に鍛えるトレーニングです。スクワット、レッグカール、レッグエクステンション、デッドリフトと組み合わせることで、男女共に思い描く理想のお尻に近づくことが期待できます。
ここでは、JATI-ATI認定トレーナー 首藤陸 監修の基、ヒップスラストの効果的なやり方について、正しいフォームや意識するポイント、回数と負荷の設定目安をわかりやすく解説します。
ヒップスラストとは?
ヒップスラストとは、お尻をメインで動作させるトレーニングです。英語で書くと”Hip Thrust”で、”Hip”は「お尻」、”Thrust”は「ぐいっと押す」ことを表します。トレーニング動作は名の通り、「お尻でぐいっと押す」ことの繰り返しです。
基本は仰臥位で、股関節付近に置いたバーベルを、臀部と大腿部を使って持ち上げることで、総合的な下半身の強化、美尻の効果が期待できるトレーニングです。ジムでないとバーベルなどの器具は揃いにくいですが、工夫次第でお家トレーニングでも十分ヒップスラストでお尻に負荷を掛けることができます。
ヒップスラストは背中に重心が掛かるので、重量がある安定した台が必要です。ジムで行うのであれば、ベンチプレスのベンチやダンベル種目を行うフラットベンチなどはベンチ自体が重く脚が滑らないので安心してトレーニングに臨めます。お家などではソファやベッドで代用できますが、台になるものが動いてしまうことや、最悪の場合は動作中に転落する恐れがあります。適した台がない場合は、床に仰向けで寝た状態で行うことをお勧めします。
ヒップスラストで鍛えられる筋肉は?
ヒップスラストで鍛えられる筋肉は、以下の3つの筋肉です。
・大臀筋
・ハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)
・大腿四頭筋
「大臀筋」は、ヒップスラストの名前にあるヒップ(お尻)全体を覆うようについている筋肉です。
人間の身体の中で最も大きな筋肉で、股関節の伸展と外旋に作用します。最も大きい筋肉なので、基礎代謝の向上に欠かせない部位であり、大臀筋の作用である股関節の伸展は、走るときに地面を後方へ蹴る動作、人間が二足歩行できるようになったのも大臀筋の発達によるものです。
大臀筋を鍛えることがヒップアップにつながり、美尻効果や、競技パフォーマンスの向上が期待できます。
「ハムストリングス」は、ももの裏側についていて、外側は大腿二頭筋、内側は半腱様筋と半膜様筋の計3本のことをハムストリングスと呼びます。
ハムストリングスも大臀筋と同様に、走るときの地面を後方へ蹴る股関節の伸展で使われて、大臀筋と連動しています。他の作用としては、膝関節の屈曲、股関節の内旋と外旋、日常生活でも頻繁に使われている筋肉です。
ハムストリングスを鍛えるとお尻とのメリハリがついて、下半身のシルエットが綺麗になるでしょう。
「大腿四頭筋」は、ももの前側の筋肉です。ヒップスラストでは補助的に使われており、股関節の屈曲と膝関節の伸展で作用します。大臀筋と同じく人間が二足歩行を可能にしたのは大腿四頭筋の発達も大きなきっかけです。
大腿四頭筋は4つの筋肉で構成されていて、鍛えられた大腿四頭筋は老後に転倒予防や寝たきり防止に役立ちます。
ヒップスラストで期待できる効果は?
ヒップスラストで期待できる効果は、以下の3点です。
・引き締まったお尻とももが手に入る
・基礎代謝の向上
・競技パフォーマンスの向上
「引き締まったお尻とももが手に入る」ことは、ヒップスラストがお尻ともも裏のトレーニングに特化しており、ヒップアップ効果が高いことがお尻とももの引き締めにつながるためです。
ヒップスラストで主に使われる筋肉が大臀筋で、大臀筋はお尻全体を覆うようについているため、お尻のたるみ改善が期待できるでしょう。ハムストリングスにも負荷が掛かることで、もものシェイプアップにも効果があります。
筋肉の大きさランキングをつけると、「1位、大臀筋」「2位、大腿四頭筋」「4位、ハムストリングス」です。基礎代謝は筋肉量に比例するので、ランキング上位の部位をトレーニングできるヒップスラストは「基礎代謝の向上」に役立ちます。基礎代謝が向上することで脂肪燃焼効率が上がり、
「競技パフォーマンスの向上」については、ヒップスラストが大臀筋を主に使い、ハムストリングスと大腿四頭筋も働くことで、下半身の強化が競技パフォーマンスに直結します。階段の昇降や立ち上がる動作が楽になるなど、日頃の運動能力向上も期待できます。
競技動作を考えるとヒップスラストのみだと十分ではないので、スクワットやレッグカール、レッグエクステンションと組み合わせて、運動能力を向上させていきましょう。
JATI-ATI認定トレーナー 首藤陸 コメント 女性と男性を問わずに「ヒップスラスト」をトレーニングに入れることがおすすめです。
上記の解説にも記載がある通り、お尻の筋肉「大臀筋」は、最も大きな筋肉なので、筋肉量を増やすことで多くのメリットがあります。
・基礎代謝の向上
・体の軸がブレにくくなり、トレーニングで使用する重量の向上
特に、これらの効果が期待できます。
ヒップスラストは「女性が行う種目」このように考えている方も多いですが、男性も取り入れることで、体を引き締めることや筋肉を大きくするためにおすすめです。
「みんなのパーソナルトレーニング」では、NSCA認定トレーナー(NESTA-PFT、NSCA-CPT)や管理栄養士の監修の基、情報提供を行っております。
ヒップスラストで効果を発揮するフォームを解説
ヒップスラストで効果を発揮するフォームを解説していきます。基本の正しいフォームで狙った部位をトレーニングすることと、使っている部位や動作中の姿勢など意識すべきポイントを押さえてください。
ヒップスラストはトレーニング動作で難しい動きを求められませんが、トレーニング効果を上げるために正しいフォームを覚えて実践することが大切です。間違ったフォームでは狙った部位に効かないばかりか、怪我につながる恐れも出てきます。
意識すべきポイントを押さえることで、トレーニング効率が上がるのはもちろん、怪我の予防になるので是非参考にしてください。
基本の正しいフォーム
基本の正しいフォームは以下のとおりです。
1)台を横向きにして、背中の上部を台につける
2)バーベルを股関節の付近に置いて、手は順手にして軽くシャフトを握る
3)足裏はやや踵重心で床を押し、息を吐きながら、腰を持ち上げる
4)バーベルを下ろすときは、息を吸いながら下ろす
5)10回を3セット行う
フラットベンチなどの幅の広い側に肩甲骨付近をつけ、膝を軽く曲げた状態で足裏全体を床につけます。足と膝は肩幅ぐらいに開き、バーベルにウエイトをつけた状態で、股関節辺りに置きます。手は順手にして軽くシャフトを握るようにしてください。
もしバーベルが身体に当たる部分が痛いようだったら、バーベル用のパッドをつけて行うと痛くなりにくいです。
足裏全体を床にしっかりつけ、踵で床を押すようにしてバーベルを持ち上げます。力を入れるときに息を吐きながら、腰が反り過ぎないようにバーベルを持ち上げていきましょう。
バーベルをしっかり持ち上げてから、息を吸いながらゆっくりとバーベルを下ろしていきます。下ろすときは、お尻が床に触れないようにして、休むことなく連続で動いていきます。
3と4の動作の繰り返しが10回を1セットとして、インターバル(休憩)を挟んで3セット続けて行います。ヒップスラストでは自分が思っているよりも高重量でトレーニングできますが、複数セット行うことを考慮して、構えたときに少し軽いと感じるぐらいのウエイトで行うのがお勧めです。
JATI-ATI認定トレーナー 首藤陸 コメント 初心者の方は、15回を3セット行える重量から始めることがおすすめです。
多くの方は「10回3セットが良い」と考えていますが、僕の場合は、異なる意見を持ちます。
初心者の場合、トレーニングフォームが上手くできず、怪我につながってしまうリスクが高いです。
怪我につながってしまうことで、トレーニングができなくなり、辞めてしまうこともあります。
まずは、正しいトレーニングフォームを体に身につけることが最優先。
なので、15回でセットを組み、回数を繰り返すことで、トレーニングフォームの向上を目指します。
意識すべきポイント
意識すべきポイントは、以下の3点です。
・常にお尻を締めるイメージで行うこと
・股関節に対して、つま先と膝の角度は45度以下にすること
・腰を持ち上げることばかり意識しないこと
ヒップスラストで意識すべき大事なポイントは、常にお尻を締めるイメージで行うことです。バーベルを持ち上げる動作は、大臀筋を使わずハムストリングスと大腿四頭筋の筋肉を使って行えますが、大臀筋に効かず、美尻の効果が期待できません。美尻効果を最大限求めるために、常にお尻を締めるイメージを大切にしてください。
ヒップスラストを行うとき、足の角度も大切です。トレーニング動作中はつま先の角度を45度以下にし、つま先と膝が同じ方向を向くよう意識してください。疲れてくると膝が開きがちになり、大腿部の筋肉をメインに使うことにつながります。疲れてきてもつま先と膝の角度を45度以下に保ち、お尻にしっかり効かせましょう。つま先と膝が同じ方向を向くよう行うことで、トレーニング時の脚部の怪我防止にもつながっています。
ヒップスラストは腰を持ち上げる動作であるために、腰にばかり意識が集中しやすく、バーベルを持ち上げるときに腰から持ち上げたり、腰を反らし過ぎたりしてしまいがちです。腰ばかり意識すると、お尻に効かないだけでなく、腰痛などの怪我につながる危険性が高まります。意識するポイントは、腰ではなくお尻を締めて自然に持ち上げるイメージでバーベルを持ち上げ、腰が反り過ぎないフォームで下ろすということを意識しましょう。
JATI-ATI認定トレーナー 首藤陸 コメント トレーニングフォームを維持することで、狙いたい筋肉に正しく刺激を入れることができ、筋肥大を効率的に行うことができます。
トレーニングフォームが崩れてしまうことで、狙った筋肉に刺激を入れることができない場合が多々あります。
例えば、ヒップスラストで高重量を使い、上までバーベルを挙上することができなくなることで、お尻やハムストリングスの刺激が弱くなり、腰への負担が強くなります。
結果、腰に痛みが出てしまうことも。なので、トレーニングフォームを維持し、正しく刺激を入れることが重要です。
ヒップスラストの回数や負荷を決めるには?
ヒップスラストの回数や負荷の目安を決めるには、まず自重で10回×3セットを目安に行って、楽に感じて簡単に3セットできてしまう状況であれば、少し回数を増やすことで調節してください。自重トレーニングでフォームを固めてから、目標と目的に合わせてバーベルやダンベルを用いた負荷でトレーニングしていきましょう。自重で行う場合も、基本の正しいフォームと意識すべきポイントは、バーベルを利用するときと全く同じです。現状のスタイルを維持し、引き締まったヒップを目指す場合と、ヒップアップでお尻を引き締め、さらにお尻を大きくする筋肥大が目標の場合について、ヒップスラストの回数や負荷の目安を決める方法を以下に紹介していきます。
JATI-ATI認定トレーナー 首藤陸 コメント 初心者の場合、まずはダンベルやバーベルを使わずに練習することがおすすめです。
ダンベルやバーベルを使うことで、バランスを取ることに意識がいき、正しいフォームでトレーニングできなくなってしまうことがあります。
なので、自重で15回2セット行い、フォームを確認した後に3kgのダンベルなど軽い物からフォームが乱れないようにスタートしましょう。
引き締まったヒップを目指すなら
引き締まったヒップを目指すなら、自重トレーニングから始めていきましょう。10回×3セットで、お尻に効く感じが弱ければ、少しずつ回数を増やすことで調節してみてください。体感として1セット当たりの回数は多くなりますが、「ある程度きつく感じて、もう1回もできないと感じたら終了する回数」がポイントです。疲れてきても正しいフォームを守り、最後まで頑張ってください。
バーベルやダンベルを使用する場合は、回数が15~20回×3セットで、ウエイトは自重トレーニングで得られる体感と同じになるようウエイト調節を行ってください。インターバル(休憩)を挟んで3セット続けて行います。
ウエイトの設定は、自重トレーニングで行うと、太く大きくなることは望みにくく、バーベルやダンベルを使用する場合でもウエイト設定と1セット当たりの回数を適切に行えば、現状のスタイルを維持し、引き締まったヒップを目指すことが可能です。
ヒップスラストは正しいフォームで行うことができれば、大臀筋以外に強く負荷がかかるトレーニングではありませんので、ヒップスラストをやりすぎても脚が太くなる心配はいりません。自重トレーニングで行う場合、10回前後しか動作できない種目は筋肉が大きくなる可能性が高くなりますが、下半身の種目で10回前後しか動作できないことは考えにくく、特にヒップスラストでは、臀部や大腿部が太く大きくなることは自重トレーニングではほぼありません。
筋肥大が目標なら
筋肥大が目標なら、バーベルやダンベルを使用することが必要条件です。セットの設定目安は3セットで、引き締まったヒップを目指す場合と同条件です。回数の設定目安は1セット8~12回で「ある程度きつく感じて、もう1回もできないと感じたら終了する回数」に8~12回で達することは、自重以上にウエイトを増やさないと叶いません。バーベルやダンベルを用いて、1セット8~12回が限度となるウエイト設定で3セットの負荷をお尻に掛けてください。
ヒップスラストはダンベルでも行うことのできるトレーニングですが、バーベルを使用するとダンベルよりも負荷がお尻に安定して掛かり、スムーズに動作することを期待できます。
ヒップスラストでバーベルを使用する注意点は、計40㎏以上のウエイトを扱うようになってくると、ダンベルで使用する小さめのプレートでは足りません。10㎏以上のプレートをシャフトの左右につけるので、動作の途中で外れないようストッパーで必ず固定し、プレート脱着のときに足へ落とさないよう心掛けてください。
10㎏以上のプレートは直径が大きいので、シャフトと床の間が広くなり構えやすくなりますが、プレートと床の間は狭くなるので、もし動作中にプレートと床が触れる場合、10㎏のプレート1枚なら、5㎏のプレート2枚をつけてトレーニングを行ってください。
反対にバーベルのシャフトのみや小さめのプレートをつけた場合は、シャフトと床の間が狭くなり、バーベルを持ってスタートポジションへ構えるのに一苦労することでしょう。バーベル用に台をバーベルの左右に置くことで、プレート部分が床から浮いてシャフトと床の間が広がり、スタートポジションで楽に構えることができます。
自重プラスアルファの負荷が掛かればよいので、ゴムバンドを使ってヒップスラストを行うことも筋肥大が目標なら選択肢のひとつです。筋肥大が目標でも、正しいフォームと意識すべきポイントを押さえて頑張りましょう。
ヒップスラストは有効な筋トレ
ヒップスラストは美尻に有効な筋トレです。ヒップスラストの動きは大臀筋のコンセントリック収縮がメインで筋肉痛が起きにくく、美尻トレーニングに向いていないという見解をネット上で見かけます。
筋の収縮形態は3つあり、コンセントリック収縮、エキセントリック収縮、アイソメトリック収縮です。エキセントリック収縮が筋の収縮形態の中で最も筋肉に負荷が掛かり、筋肉痛を起こしやすいと考える人がいます。
ヒップスラストでは、エキセントリック収縮の状態がお尻を下げていく動作です。お尻から負荷が抜けやすく、エキセントリック収縮の効果が得られにくいと思われていることが美尻に向いていないという考えでしょう。
近年、コンセントリック収縮とエキセントリック収縮を比較しても、筋肥大に大きな差が無いことが論文で発表されています。ヒップスラストの動きは、下げる動作をゆっくり行えば、少なからずエキセントリック収縮を大臀筋で引き起こすことも可能です。
筋肉痛があまり無いという意見もありますが、コンセントリック収縮だけでも筋肥大するので、大臀筋にしっかり負荷が掛かるヒップスラストは美尻トレーニングに向いています。
ヒップスラストの効果的なやり方について まとめ
ヒップスラストは、正しいフォームや意識するポイント、回数と負荷の設定を適切に行えば美尻効果が期待できます。他の下半身トレーニングと組み合わせて、ヒップスラストにも取り組み、男女共に思い描く理想のお尻を手に入れてください。
トレーニングを始めると「ひとりではトレーニングを続けられる自信がない」「ひとりでトレーニングすると正しいフォームで行えているかわからない」という不安を感じる方が多いでしょう。不安を解消するには、プロのトレーナーにマンツーマンでトレーニング指導を受けられるパーソナルジムに通うこともひとつの手段です。
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ヒップスラスト以外にもタイプ別にみる美尻になるためのチェックリストの記事を掲載しております。詳しく知りたい方はぜひ、ご確認ください。
■監修者プロフィール : 首藤陸
・日本トレーニング指導者協会認定トレーニング指導者(JATI-ATI)
・モチベーションマネージャー
・年間1,000セッション以上を担当
・ダイエットブログ1年間毎日投稿
・24hジムFC9店舗売り上げNo.1
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