高地トレーニングとは?高地トレーニングの効果をご紹介

高地トレーニング

監修者:JATI認定トレーナー 首藤陸

陸上競技の選手が行うイメージの強い高地トレーニング。

実は、街中の専用スタジオでも行えます。一般の方も、運動不足解消やダイエット目的で参加可能です。

今回は、JATI認定トレーナーの首藤さんとともに高地トレーニングの効果や方法、向いている人の特徴を解説します。

通常のジムでのトレーニングで効果が出にくかった場合や、今以上に体を鍛えたい場合に参考にしてみてください。

高地トレーニングとは?

高地トレーニングとは、標高の高い場所でトレーニングする方法です。

平地と比べて、低酸素・低気圧・低温の山地環境を高地と呼びます。高所と混同されがちですが、高所は地面からの高い場所のことを指しており、ビルやタワーなどの背の高い建物も高所です。

一方、高地は高い山地を意味し、単純に地面より高さのある場所のことを指しているわけではありません。

わざわざ高地でトレーニングを行うのは、体に負荷をかけた状態でトレーニングして、体の機能を高めるためです。通常、高地に行くと酸素ボンベが必要だったり、高地に慣れるトレーニングをしなければならなかったりします。

低酸素・低気圧の環境でトレーニングすると、平地でトレーニングするよりも効率よく効果を得やすいメリットがあります。ただし、体へ負荷のかかるトレーニングのため、専門家の同行やアドバイスが必要です。

理想的な標高

高地トレーニングでは、トレーニングを行う標高が重要です。高地といっても、1,000mと10,000mでは酸素濃度や気圧、気温が大きく異なります。

標高0m(地上)では、酸素濃度は約20%、気圧は1013hPa(=1気圧)です。標高2,000m〜2,500mになると、酸素濃度15〜16%、気圧は約0.7〜0.8気圧まで下がります。※

※柳田亮.「高地トレーニング合宿におけるトレーニング効果と圧受容器反射機能の関係」. 日本衛生学雑誌67巻3号p417-422. 2012年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/67/3/67_417/_pdf/-char/ja, (入手日 2021-11-21)

陸上競技の場合、世界的な見解では標高2,300m前後が適していると考えられています。ただし、瞬発力を鍛える際は標高1,500m〜1,600mに滞在して、標高1,800m〜2,000mで高地トレーニングを行うのが一般的。ジュニア選手や初心者選手の場合は、標高1,000m〜1,500mから始めると効果的です。※

※小林寛道. 「陸上競技」. 高地トレーニング―ガイドラインとそのスポーツ医科学的背景―p8-9. 平成14年3月.  https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data0/publish/pdf/guide7b.pdf, (入手日 2021-11-21)

また、高地トレーニングの効果を実証する研究によると、標高3,000mを超える環境でトレーニングすると、陸上競技での持久力が向上すると報告されています。※

※小林寛道. 「陸上競技」. 高地トレーニング―ガイドラインとそのスポーツ医科学的背景―p27-35. 平成14年3月.  https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data0/publish/pdf/guide7i.pdf, (入手日 2021-11-21)

高地トレーニングの効果

手間のかかる高地トレーニングをするなら、「平地でトレーニングすればよいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、高地トレーニングは平地でのトレーニングと比較して、持久力の向上や酸素運搬機能の向上など、さまざまな効果が期待されます。

平地でトレーニングするよりも短時間で効果を発揮すると考えられており、ダイエットにも適した運動方法です。

ここでは、高地トレーニングで得られる4つの効果を解説します。

酸素運搬・消費機能の向上

高地トレーニングでは、体内の酸素運搬能力や酸素消費機能の向上が期待されます。

そもそも人間の体内に取り込まれた酸素は、血液中の赤血球にあるヘモグロビンと結合します。

赤血球は血流によって全身を巡り、酸素を配る役割の血球成分です。酸素は体内の臓器や代謝に欠かせない成分で、血中の酸素によって人間の体は機能しています。

高地トレーニングでは低酸素環境で運動するため、体内の酸素が不足します。そのため、平地でトレーニングした場合と比較して、体内に酸素が取り込まれやすく消費されやすい環境になることが高地トレーニングの特徴です。

少ない酸素環境で通常、あるいは通常よりも体を動かせるようになると、運動能力のパフォーマンスが向上します。

持久力の向上

持久力の向上も、高地トレーニングで期待できる効果の1つです。

ある研究報告では短期的に高地トレーニングを行なった場合、平地での長距離走において、心拍数の上昇や動脈酸素飽和度の低下の程度が、小さいことが確認されています。※

動脈酸素飽和度とは、心臓から全身に運ばれる動脈中の赤血球に含まれるヘモグロビンの割合です。

運動中に心拍数が上がったり、動脈酸素飽和度が低下したりするのが一般的。心拍数の上昇や動脈酸素飽和度の低下を抑制できることから、高地トレーニングは持久力の向上に効果的と考えられています。

※小林寛道. 「陸上競技」. 高地トレーニング―ガイドラインとそのスポーツ医科学的背景―p27-35. 平成14年3月.  https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data0/publish/pdf/guide7i.pdf, (入手日 2021-11-21)

疲労延長能力の改善

高地トレーニングには、疲労回復を早める効果も期待されています。

平地でトレーニングするよりも体に負担のかかる高地トレーニングでは、血液量の増加や血管増強の効果があると考えられています。血液量が増えると、疲労感を与える老廃物の除去が促進され、結果的に疲労回復を早めることがメリットです。

また、高地トレーニングと乳酸の関係性の研究報告もされています。

乳酸とは、糖質代謝によって生成される物質です。乳酸が作られる過程で発生する物質によって、疲労が発生すると考えられています。※

※e-ヘルスネット. 「乳酸」. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-045.html, (参照 2021-11-21)

ある研究で競泳選手に高地トレーニングを実施し、血中乳酸値に対する泳速度を求めたところ、平地よりも泳速度が向上しました。つまり、高地トレーニングした場合、同じ疲労状態でも泳速度の上がることが示唆されます。※

※田場昭一郎. 「一流競泳長距離選手の高地トレーニングに関する一考察」. 福岡大学スポーツ科学研究44(2),P57-65. 2014年3月. https://ci.nii.ac.jp/naid/110009758234, (入手日 2021-11-21)

ダイエット効果

高地トレーニングには、競技のパフォーマンス向上だけでなく、ダイエット効果も期待されます。

人間の細胞内にあるミトコンドリアは、エネルギー産生に関与します。運動に必要な有酸素性エネルギー代謝は、ミトコンドリアが担っている代謝経路です。※

高地トレーニングすると、酸素の少ない状況でもミトコンドリアが、エネルギー産生を活発に行い始めます。つまり、代謝が促進されている状態です。

ミトコンドリアによるエネルギー産生が活発になり、原料となる脂質の消費も多くなるため、ダイエットに効果的と考えられています。

※e-ヘルスネット. 「ミトコンドリア」. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-054.html, (参照 2021-11-21)

高地トレーニングで気を付けるポイント

高地トレーニングは、平地で行うトレーニングとは異なる注意点があります。低酸素環境の中でのトレーニングは、脱水や睡眠不足、疲労回復の遅延が起こりやすい状況です。

起こりやすい症状を理解し、正しい対策を取りましょう。ここでは、高地トレーニングで気を付けたいポイントを紹介します。

しっかり睡眠をとる

高地トレーニングでは、酸素の薄さから寝苦しさを感じるため、睡眠障害を引き起こす可能性があります。また平地よりも低酸素の状態は、意識していなくてもストレスになっていることもあるでしょう。

睡眠不足に陥りやすい高地トレーニング中は、睡眠時間を多めに確保してしっかり睡眠を取ることが重要です。

脱水症状が起きやすい

脱水症状も、高地トレーニングで注意したいポイントです。

高地は平地よりも気温が低く、乾燥しています。脱水症状が起きやすい環境にもかかわらず、症状に気付きにくいデメリットがあります。

高地トレーニングするときは、喉が渇いたと感じなくても、定期的に水分を摂取して脱水症状を予防しましょう。

一時的な効果しか得られない

高地トレーニングは、ハードなトレーニングにもかかわらず、一時的な効果しか得られない可能性もあります。

せっかく高地で低酸素環境に順応しても、平地に戻ると酸素の多い状態に慣れてしまうからです。高地トレーニングの効果は、短期トレーニングで下山から2〜3日、長期トレーニングで下山後5〜6日に効果が現れると考えられています。効果のピークを過ぎると、徐々に体は平地環境に慣れてしまいます。※

高地トレーニングの効果を長く期待するなら、定期的に高地トレーニングや専用スタジオでのトレーニングが必要です。

※小林寛道. 「陸上競技」. 高地トレーニング―ガイドラインとそのスポーツ医科学的背景―p8-9. 平成14年3月.  https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data0/publish/pdf/guide7b.pdf, (入手日 2021-11-21)

首藤陸JATI-ATI認定トレーナー 首藤陸 コメント

高地トレーニングを初心者ユーザーが行う際のリスクに関しては「辞めてしまう」ということが最も大きなリスクだと考えます。

高地トレーニングは、酸素がない状態でトレーニングを行うので、通常のトレーニングよりも肺活量が上がり、きついです。

トレーニング経験者でもきつい高地トレーニングをトレーニング初心者が継続することは、非常に難しいと思います。

なので、トレーニング初心者の方は、軽い有酸素運動や筋トレ、軽い高地トレーニングから始めると良いでしょう。

高地トレーニングが向いている人

高地トレーニングにはさまざまな効果がありますが、すべての人に向いているわけではありません。求める効果によっては、他の方法が向いているケースもあります。

ここでは、高地トレーニングが向いている人の特徴を解説します。

短期間で効果を得たい人

短期間でパフォーマンス向上やダイエット効果を得たい人には、高地トレーニングが向いています。

高地トレーニングは一般的に短期1週間、長期でも3週間前後で行うトレーニングです。つまり、数週間で効果が現れやすく、早く効果を得たい人に向いているといえるでしょう。

効果が顕著に現れるのは、短期間の高地トレーニングで下山後2〜3日です。※

※小林寛道. 「陸上競技」. 高地トレーニング―ガイドラインとそのスポーツ医科学的背景―p8-9. 平成14年3月.  https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data0/publish/pdf/guide7b.pdf, (入手日 2021-11-21)

ダイエットが目的の人

高地トレーニングは競技選手だけでなく、ダイエット目的の人にも向いています。

低酸素環境での運動は、代謝を促進するミトコンドリアの働きを活発化させ、ダイエット効果を発揮します。

近年は、室内を低酸素環境に設定して行う高地トレーニングも人気です。高地へ行く必要がなく、仕事帰りや休日に高地トレーニングができるため、気軽に取り組めます。

高地トレーニングの方法は?

前章までで、高地トレーニングの条件や気を付けるポイントなどを解説しました。

高地トレーニングには、酸素運搬能力の工場や持久力の向上など、さまざまな効果が期待されます。

しかし、高地へ行ってトレーニングすれば、どのような方法で行っても高地トレーニングになるわけではありません。正しく高地トレーニングしないと、体調不良の原因となり危険です。

ここからは、高地トレーニングの方法を解説します。

短期的に高地で行う

短期トレーニングは、平地で蓄えた体力が残っている1週間のうちにトレーニングを行い、平地に戻って休息を取る方法です。

高地で3泊4日、あるいは1週間程度の短期トレーニングを行う場合は、1日目を順応日として2日目以降からトレーニングを開始します。短期トレーニングでは、下山後2〜3日で効果が現れると考えられています。

長期的に高地で行う

高地トレーニングを3週間以上の長期に渡って行う場合は、徐々に体を高地に慣らしていきます。

1週目は高地への順応に専念し、2〜3週目で少しずつ運動量を増やしていくとよいでしょう。1週目から多くのトレーニングを行うと、2〜3週目で体調を崩す原因になります。

長期トレーニングでは、下山後1週間前後で好記録を出しやすくなると考えられています。ただし、平地に戻ってすぐは体力が回復していないため、好記録は出にくいのが実情です。そのため、高地トレーニングによる体力低下が回復してから、好記録が出ると考えましょう。

専用スタジオで行う

高地へ行ってトレーニングするには、移動や宿泊場所、専門家の手配など手間も費用もかかります。競技選手ならともかく、一般の方には手の出しづらいトレーニング方法です。

しかし専用スタジオを利用すれば、都心でも簡単に高地トレーニングができます。

高地トレーニング専用スタジオとは、低酸素環境を人工的に再現し、まるで高地にいるようなトレーニングができるスタジオです。血圧や心拍などのバイタルサインの測定もその場ででき、専門スタッフがプランニングやコーチをしてくれます。

自分で高地トレーニングのためのスタッフを雇ったり、トレーニング場所を用意したりする必要はありません。

専用スタジオなら、トレーニング初心者の方も気軽に通え、週1回30分歩くだけなどのプランから始められます。体験レッスンでは、実際の専用スタジオで高地トレーニングを体感できます。

まとめ

高地トレーニングは、平地より酸素の薄い高地でトレーニングする方法です。

酸素運搬機能や持久力の向上、ダイエット効果などが期待できます。特に、ダイエット目的の人や短期間で効果を得たい人におすすめのトレーニング方法です。

高地トレーニングは高地に行かなくても、専用スタジオで高地に似た環境を再現してトレーニングできます。本格的に競技をしている人はもちろん、仕事帰りに少しだけトレーニングしたい人にもおすすめです。

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